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「『芸能ビジネス』を創った男 ナベプロとその時代」
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渡辺プロダクションという、1950年代から70年代、80年代はじめくらいまで、大勢の人気芸能人を抱えていた会社を創った渡辺晋という人のことを書いた本で、あれこれをざっとなぞってあるな、こんなものではなかったろうな、という感じも受けたが、筆者の厚意のあたたかいドキュメンタリだった。

戦後、ジャズバンドのベーシストとして生活の糧を得ていた渡辺氏が、それまでの芸能のあり方を根本から変えるべく、芸能プロダクションを設立し、どんなに苦しいときも、所属ミュージシャンたちに月給を払い、興行からヤクザを締め出し、ミュージシャンたちが長く利益を得られるよう、レコードの原盤権や印税制を打ち立てたりと、今では当たり前のことだが、すべて渡辺晋と渡辺プロの社員たちが考え実現したのだと、教えられた。

渡辺氏は、自社のノウハウを、他社に惜しげなく教えたそう。
自分の会社だけが儲かればいいのではなく、かたぎじゃない、とか、河原乞食、とか言われていた芸能全体の地位向上を望んでいたようだ。

渡辺プロの隆盛は、戦後の復興と高度経済成長抜きには考えられず、皇太子ご成婚による一般家庭へのテレビの普及で、テレビ時代がやってきたこととも切り離せない。

その後、「テレビに出ない」ことを信条に掲げた歌手たちが台頭してきて、「ニューミュージック」と呼ばれた彼らが地道なライブ活動のみでレコードセールス一位を獲得するようになり、音楽のジャンルはますます多様化し、レコード大賞や紅白歌合戦というわかりやすい価値基準が崩れてしまう時代がやって来る。

たった五十年で、随分変ったな、という感じを、さすがに受ける(社会が根底から変化したのではなく、すべて世相という表層の光景だが)。
特に、時代があとになるにつれ、IT関連の発達によるメディアの多様性は、めまぐるしい。
けれど、かつてのような、「もっとよくなる」という感覚を持ちにくい今日、「豊かさ」とは何か、という疑問を人々が抱いた70年代半ばより、問いはずっと重たくなっていると思う。
大きな希望を持ちにくくなった今日、人々は、身近で、ささやかな幸福に眼を向けようとしているのではないか、と、小説、映画、ドラマなど、表現されるものを見て思う。

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