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「ヴィーナス」
評価:
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ワーナー・ホーム・ビデオ
¥ 3,600
(2008-05-08)

JUGEMテーマ:映画

おじいさんたちが、互いの薬を見せ合い、交換し合ったり(危険!)する、冒頭の喫茶店のシーンから、眼を引く、すばらしい映像。
光の入り方に充分に気を配った画面は、月並みな言い方をすると、フェルメールの絵画のよう。
一人暮らしの老人のわび住まいの、落ち着いた水色の壁紙や無垢木のやわらかさの、美しいこと。
ピーター・オトゥールの演じるモーリスの入院する病院までもが、素敵な色づかいのインテリアに見える。
光と陰の配分の妙が、やわらかく落ち着いた、それでいて心躍る映像を作り出しているのだろう。

そこへ現れたのが、モーリスの友人、イアンの姪の娘。
田舎から出てきたジェシーは、真っ黒なアイラインを太くくっきり引き、腹出しルックで、いつも何か食べている。
ジェシーの食べるスナック菓子や、ガサガサうるさいその袋は、陰に射し込む繊細な光の世界で、明らかに異質。
老人たちの世界に、ジェシーは、あまりに異分子だった。
ジェシーは、最期まで、モーリスが有名な俳優であることを知らない。
「『おしゃれ泥棒』を知らないの?!」
わたしは、心の中で、ジェシーに向かい、何度も叫んだ。
「『ラ・マンチャの男』を観なさいよ」
とも。
いやいや、モーリスは、ピーター・オトゥールではない。

若い頃には浮名を流した色男だったらしいモーリスが、洗練のかけらもないジェシーに惹かれるのは、彼女が若くてピチピチしているからなのか。
死を前に、屈辱的な愛に甘んじるモーリスの心理は、詳しく説明されない分、考えさせられる。
老いという現実を見つめて、厳しくもあたたかい映画だった。
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